藍読日記 ☆読んだ本と『幻想文学』関連の情報、その他の情報をお届けします。         2003/7/5更新
★読書メモについては主観的かつ恣意的な趣味に基づく書き散らしです。文責はすべて石堂藍にあります。
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2002年8月


2日
ニール・ゲイマン『ネバーウェア』(柳下毅一郎訳・インターブックス)
 ロンドンの地下に別の世界があるというもの。魔都物語で取り上げなかったのは、まったく気がついてなかったからで、なかなかおもしろいファンタジーだった。ただ既視感がすごくある。地下鉄の中の宮廷とか、三つの試練のある修道院とか、上と下の世界の狭間に生きている浮浪者系の人々などなど。

鎌田東二『平田篤胤の神界フィールドワーク』(作品社)
 古い連載原稿をもとにしたもの。篤胤への共感は変わらず。『幻想文学』に掲載したものと内容的にもあまり変わらない。

5日
中根研一『中国「野人」騒動記』
(大修館書店)
 UMAものにつきもののキワモノ的いかがわしさを楽しげに湛えた一冊。中国の野人騒動が村おこしに利用されるというもので、その文学的源泉と、文学への影響についても触れている。本邦にはツチノコの例もあるが、新種のサルが棲息していそうという環境であるところがさすが中国である。

6日
アリス・ホフマン『恋におちた人魚』
(野口百合子訳・アーティストハウス)
 大人向けの作品ではそこそこおもしろい著者も、ヤング・アダルトものでは薄味になってしまって冴えない。買う必要もない本。

ジェイン・ラングトン『大空へ』(谷口由美子訳・あかね書房)
 ソロー狂いの常軌を逸した両親(父親は義理の父)を持つ少女ジョージーがガンの王子に愛されて空を飛び、すばらしい(アレフみたいな)プレゼントをもらうというもの。敵役として登場するのも正義をふりかざす厭な人間だが、この両親も(つまりは作者も)偽善者にしか見えない。うんざり。

7日
オーエン・コルファー『アルテミス・ファウル』
(大久保寛訳・角川書店)
 天才的犯罪少年が地下に潜みすぐれた科学技術を持つ妖精組織と戦うというもの。つまらない。地上に出て悪さをした妖精界のトロール捕獲の後、レプラコーンの隊員が「みなさん見てください」、びかっ! と人間の記憶を消すって……これはMIBじゃないのか? 

10日
杉洋子『朝鮮通信使紀行』
(集英社)
 写真がきれいな紀行もの。江戸時代の朝鮮の外交大使のたどった道をたどる。(京)

定道明『中野重治伝説』(河出書房新社)
 評伝。何の興味もなし。(京)

会田秀介『医と石仏』(青蛙書房)
 病と身体に御利益のある石仏の探訪。解説付きの写真集。(京)

高峰秀子『にんげん住所録』
(文藝春秋)
 交友を中心にしたエッセイ集。(京)

枡谷優『北大阪線』(編集工房ノア)
 昭和15年から数年の、たぶん自伝的小説。(京)

清水正『土方巽を読む』(鳥影社)
 『病める舞姫』の精読と舞踏論。パス。(京)

11日
ロバート・サーヴィス『レーニン』
(河合秀和訳・岩波書店)
 初めてレーニンの評伝なるものを読んだ。彼の組織力というのがいまいちよく伝わってこないので、とにかくラッキーなオピニオン・リーダーだったのだという印象になる。たいへんに頭でっかちで現実を知らず、しかも我儘な甘えた子供のような人物だったが、きわめて堅固な信念によって、ソ連の基礎を築いた……。単純に要約できない複雑さを持つ作品なので、興味のある方は図書館で借りて読んでほしい。ロシア革命と言われるものがこんなにもデタラメな指導者によって成り立ちえたということ、マルクス・レーニン主義と言うけれど、その実態の情けないこと、スターリンがあまりにもひどかったのでレーニンが偶像視されているけれど、野蛮さでは変わりなかったこと(長生していたらどうなったかわからない)など、歴史に疎い私は驚いた。(京)

田中聡『妖怪と怨霊の日本史』(集英社新書)
 妖怪の日本史などではない。これは古代から平安時代にかけての日本のカミの歴史である。道真とか崇徳も入っているので怨霊なのだろう。それはまだいいとて、自然の精霊としての神々を妖怪と言ってしまうには、そのための説明が不足である。つまり付会すらないので、日本の神の特徴をある面では語りながらも、全体として浅薄になる。「妖怪と幽霊を区別するのは明治以後のことで、ここでは区別していない」というあとがきのエクスキューズはあまりにも苦しい。『腹のムシ』のおもしろさはどこへ行ってしまったのだ?(京)

15日
ロバート・ジョーダン『黒竜戦士6』
(斉藤伯好訳・ハヤカワ文庫FT)
 エグウェーンがアミルリン位になった。相変わらず内省と独り言が多い。今ふと気づいたが、ファンタジー好きの長男がこのシリーズに見向きもせず、《ファウンデーション》が大好きな次男がこれを気に入って読み続けているのは、この「いらぬ内省」をどう感じるかに拠っているのでは?

16日
斎藤美奈子『読者は踊る』
(文春文庫)
 『紅一点論』が面白かったので、続けて読んでみた。書評家出身、紋切型への疑問、ということでこの人の仕事は総括できそう。とにかくよく読んでいる。ある切り口で作品をくっきり判断できる。というのが書評家の特徴だ。そして既成概念や当たり前と思われていることに異を唱えることで批評が成り立っている。私にとって斎藤美奈子はフェミニスト以外のものではないが、意外なことに、本書ではフェミニズムからやや距離を置き、「フェミニズムは……世代の運動」「フェミニストの性癖だと思ってきたものも……全共闘世代の性癖が交じっていたのかもしれない」といった言葉で語っている。上野千鶴子などには違和感があるということか。60年生まれの私は基本的に全共闘世代はパス、60年代文化などというものはけり飛ばす、というスタンスであるが、フェミニズムが全共闘的運動だったとは思ってこなかった。

テリー・グッドカインド『魔石の伝説』(佐田千織訳・ハヤカワ文庫FT)
 すごい理不尽な展開。無理やり続編を書いたんだろ、お前は!

17日
『ふらんす幻想短篇精華集』
(内田善孝訳・透土社)
 カステックスのコント・ファンタスティークの訳。

18日
スーザン・プライス『エルフギフト』
(金原瑞人訳・ポプラ社)
 暗く重いファンタジー。いかにもプライスらしいが、あまりにも悲劇的で読むのがつらい。

相澤啓三『孔雀荘の出来事』(書肆山田)
 詩集。
 「鬱に向かいがちなぼくの日常への
  ありふれていない優しさに胸を突かれるのだ」
 愛がたくさん。

19日
武田雅哉『猪八戒とあそぼう!』
(歴博ブックレット)
 ですます調で、子供向けに書かれているんだろうか?? 猪八戒というキャラクターの利用のされ方を文学以外のメディアを主に紹介したもの。

メーテルランク『ペレアスとメリザンド』(杉本秀太郎訳・岩波文庫)
 対訳本。私はフランス語がまったくできない。当て推量に発音してみるが、日本語との落差にとまどうばかりである。

20日
エドガー・バングボーン『デイヴィー』
(遠藤宏昭訳・扶桑社)
 第三次大戦後の未来。ミュータントとか変なキリスト教とか変な国家とか出てくるけどそれはほぼ背景で、孤児の少年の放浪を描いた普通小説。SFとしてはおそろしくつまらない。

戸塚悦朗『日本が知らない戦争責任』(現代人文社)
 前にも書いたが、「性奴隷」という言葉とともに政治学の内田さんに教えてもらった本。慰安婦問題に関わる外務省の対応のひどさと情報隠蔽(女性蔑視が背景にある)、政府の無能ぶりを暴いたもの。あまりにも暗澹たる内容なので、生きていたくなくなる。「性奴隷」という言葉は十年前から公式に使われているので、自分の無知ぶりにも慚愧を感じる。ゴーマニズムで慰安婦問題が話題になったとき、こういうハードな説得力のある報告が、ブックレットでなされて、世間に広まれば良かったのに、と思う。マンガの影響力に勝つにはマンガで対抗するぐらいしか思いつかないけど……。
 「あいつら(外務省)は関東軍の頃とまるで変わっちゃいないんだ」と言ったのは、私の高校時代の友人である。夫の転勤でインドネシアに住んでいた彼女は、ジャカルタ暴動に行き合ったのだが、ある日、日本人学校に子供を行かせると、外務省の子だけ来ていない。その日のうちにきな臭くなり、民間のつながりで連絡を取り合って自主的に避難したものの、外務省からは何の情報も入らず、もちろん援助もなし。要するに外交官の妻子だけは真っ先に避難させ、民間人は勝手にしろという態度だったという話である。
 本書の中にも、関東軍と同じこと(情報の隠蔽にとどまらない、意図的な操作)をしているという指摘がある。本書の著者は、日本では人権が無視されている、常に個人より国家であり、人間を幸福にしないと語る。まあ、その通りなのだろう。

C・ピーブルズ『人はなぜUFOと遭遇するのか』(皆神龍太郎訳・文春文庫)
 稲生平太郎の『何かが空を飛んでいる』のような、空に変なものを見てしまったりすることの考察かと誤解してしまうようなタイトルだが、合衆国におけるUFO信仰の流れを歴史的に追ったもの。まったくおもしろみのない本。UFOについてほとんど何も知らない人向け。どうせなら空軍のUFO対策についての詳細な報告の方がまだ楽しめたのでは?

イルゼ・アイヒンガー『縛られた男』(眞道杉・田中まり訳・同学社)
 昨年の十月に出ていた本。また取りあげ損ないである。アイヒンガーは母がユダヤ人であったというユダヤ系ドイツ人で、青春時代をナチスドイツ下のウィーンで、母とともに隠れ住んだという経歴の持主。双子の妹がいるが、そうしたすべての体験を基盤とした非常に暗いファンタジー『より大きな希望』という長編小説でデビュー。この作品は月刊ペン社の妖精文庫で出たきりなのが残念だ。
 本書は1948~52年の短篇をまとめた作品集の翻訳で、表題作「縛られた男」は『現代ドイツ幻想短篇集』(白水社)に収録されているが、その他の作品は初訳なのではないだろうか。アイヒンガーの作品は、翻訳からも象徴的な作品であることが如実にわかるため、良い訳者を得ていると思いたい。
 現実と幻想とがわかちがたく、というよりは両者には境界がありながらもそれを曖昧にする形で作品世界が紡がれていることが多い。また観念的なところがとても強くて寓話的になっているものと、感覚面を強めて幻想世界へと歩み寄っていくものとあり、「縛られた男」「開封された指令」は前者で、「ポスター」「湖の幽霊たち」は後者であろう。同時にそれらの入り交じる、難解な作品が「鏡物語」「月物語」となるように思われる。アイディア・ストーリー風の「私が住んでいる場所」でさえ寓話に見えるのは、アイヒンガーの特質なのだろう。おもしろい短篇集なので、暗い寓話的作品が好きな人、奇妙なユーモアのカフカ的作品が好きな人には一読をおすすめしたい。

三仏生葦生『ざくろ』(作品社)
 夢の記述風連作短編集。何が書きたいのか、よくわからん。

舟崎克彦・靖子『トンカチと花将軍』(福音館文庫)
 福音館書店が児童書の文庫を刊行することになった。本書は可愛らしいナンセンス童話で、嫌いじゃないが、創刊のラインナップとしてはどうかと思う。福音館書店はとても良い出版社だと思うけど、この文庫を見るかぎり、今、良い社員に恵まれていないのか、とか経営が苦しいのか、と思ってしまう。

21日
ジェラルド・カーシュ『壜の中の手記』
(西崎憲ほか訳・晶文社)
 怪奇短篇集。中南米を舞台にしたものなど、半分が辺境に対する幻想物と言える。表題作はビアスの最期を描くもの。現代ヨーロッパを舞台にSFがかったものもあり、ある一定の傾向を持っている。

柾悟郎『シャドウ・オーキッド』(コアマガジン)
 しょうなもないSMポルノ。一応SFか。

マルティン・アマンスハウザー『病んだハイエナの胃の中なかで』(須藤正美訳・水声社)
 ウィーンの闇に君臨するパネギューリカーのちなまぐさい犯罪を描く本に導かれてウィーン巡りをする主人公を描いたもの。まったく何だかわかりませんでした!

ジム・ハリスン『神の創り忘れたビースト』(金原瑞人訳・アーティストハウス)
 自然の中に帰ってしまった記憶障害の男を描く表題作ほか全三篇を収録。熊革を取り戻すために旅するネイティヴを描いたユーモラスな「西への旅」が良い。ほかに、「文学」と昔の恋人、つまりは過去に未練たらたらのダメ男を描く作品を収録。訳者はおもしろいと言っているけど、読んでいてものすごくうんざりする。男にはおもしろんですかねー。

ペーター・ヴィーニンガー『ケルズの書のもとに』(松村國隆訳・水声社)
 ゾロアスター教幻想のファンタジー。ミステリーとは言い難し。サスペンスではある。

ロバート・ゴダード『永遠に去りぬ』(伏見威蕃訳・創元推理文庫)
 尾根道で一瞬邂逅した女性の幻影に憑かれた男の物語。複雑なプロットがおもしろいので、まちがっても謎解きとして読もうとしてはならない。
 私はミステリは苦手だが、ゴダードは読める。一年ぐらい積ん読状態だったのだが、深夜に読み出したら、一気読みしてしまった。ものすごく好きというわけでもないのだが、いつでもゴダードにはどこか惹かれる。結局、ゴダードの描く女に魅力を感じるのだろうか。主人公の男は、狂言回しでしかも主人公だから仕方ないのだろうが、鈍感で身勝手で、うんざりさせられることが多い。所詮この男の崇める女性に過ぎないといえばそうなんだが、でもやっぱりその女性に魅力も共感も感じるのだ。
 奇を衒ったようにも見える古風な漢字遣いも、この翻訳には合っている。

長野まゆみ『猫道楽』
(河出書房新社)
 猫になるアルバイトの話をはじめとする連作短篇集。趣味的なやおいもの。

青木和『憑融』(徳間デュアル文庫)
 自殺した弟に水の精霊が取りついて……。山田ミネコのハルマゲドンシリーズを少し思い出させる設定である。それにしても、こんなに良いお兄さんって想像できん!

林譲次『ウロボロスの波動』(早川書房)
 ブラックホールをエネルギー源として利用する機構の存在する未来世界を舞台にしたハードSF。お話自体は問題解決物でハードボイルドの風合い。

22日
佐藤弘夫『偽書の精神史』
(講談社選書メチエ)
 中世の新興宗教の精神的背景を探る。近現代の新興宗教の隆盛について、八百年後に振り返ると、ある面では同じようなことが言えそうだ。だが、当時は宗教の力が信仰面でも政治でも強かったというところが決定的に異なる。

夢野もれら『アゴヒゲ王物語』(サンマーク出版)
 何だこれは? 兄弟の夢想が作った蘭麝国を舞台にした物語。魔女が敵対する。プロットもキャラクターも文章もいい加減である。ファンタジーってなめられてるのねー。ほんとにもうこのところ、A5判の児童文学コーナーにある本を見ると、火をつけて燃やしたくなってしまう。

日下三蔵編『小酒井不木集』『渡辺啓助集』『水谷準集』(ちくま文庫)
 まとめて読むと、ああしょうもない、という気分になる。痴情ものばっかり。ゴダードだって所詮同じ動機と構造と言ってしまえばそれまでだけど……。不木の作品は1920年代で、ほんとに泥臭い。前には思わなかったことだけど、医者のくせにこんなにも非科学的で平気だったのは、当時の医療技術の低さのせい? まあ今でもSFやミステリの科学知識のレヴェルの低さを見れば、そんなに変わらないことか。
 本書は《怪奇探偵小説名作選》の1~3巻で、日本の怪奇小説についての示唆も与えてくれた。あるいは日本的怪奇とは何かということについて。

スティーヴン・キング『アトランティスのこころ』(白石朗訳・新潮文庫)
 不思議な老人と心を通わせ合った少年の体験を描く。下巻は少年の親友達のその後を描く。ガンスリンガーの世界と響きあうサスペンス・ファンタジーになってはいるけれど、要するにキングの『少年時代』&『青春時代』。こういうのに共感する人にはたまらない小説だろう。

24日
恩田陸『黒と茶の幻想』
(講談社)
 大学時代の友人(といっても幼なじみ、元恋人など関係は微妙)の男女四人が37歳という年齢で久方ぶりに屋久島に旅行をする。そのなかで、さまざまな謎に答えをみつけていくという趣向。殺人事件は起きないが、人間関係の複雑さを解き明かすという意味でのミステリとなっている。『月の裏側』でも利己的でしょうもない男に引かれる女を描いていたけど、ここにもそっくりな男が登場する。作者はこういう男が好みなんだろうか?……短篇で使った趣向や『麦の海』などのストーリーを作品中に配している。現実離れした話だが、それなりにおもしろく読める。

25日
篠田真由美『綺羅の柩』
(講談社ノベルス)
 建築探偵シリーズ。富豪の後妻になったタイ人の女性をめぐる物語。
 本格を嫌うのはオヤジなんだというセリフがあって、とすると私はオヤジなんだと思った。
 
小野不由美『華胥の幽夢』(講談社文庫)
 十二国記の短篇。
 泰麒の話が冒頭にあり、うーんと思う。こいつは十一だったんだ。年の割にはものすごい幼さである。八歳くらいだと思っていた。そういえば建築探偵の蒼も二十歳を越えたのだが、蒼もナイーヴで、純真で幼くて、十五歳ぐらいの感じ。泰麒にしても、蒼にしても、こんなのが近間に居たら守ってやりたくなって当然か。

27日
西研『大人のための哲学授業』
(大和書房)
 フッサール、ハイデガーの系列の哲学者(アンチ・ポストモダン)による西洋哲学概論。内容的には高校の倫理社会という感じなのに、大人のため……というのが不気味。オッサンとかが、若者の性向の検討のためにこの講義を利用しようとするイメージが浮かんでしまう。
 不思議でならないのは、日本の西洋哲学者は東洋哲学の勉強をしないのかということだ。仏教哲学に触れても西洋哲学に魅力を感じていられるっていうのがまったく理解できん。もうひとつは、ヨーロッパの哲学なのに、どうしてこんなに宗教(キリスト教・ユダヤ教)の問題をオミットして話が進められるのかということ。それまでの宗教的世界像が壊れているから、というのでは説明にならない。壊れていればなおさら宗教をどう扱うかが問題とされているはずなのだ。(

28日
山口仲美『犬は「びよ」と鳴いていた』
(光文社新書)
 擬音語・擬態語の歴史的変遷を検討する。最近流行の擬態語を見ると、下品であっても素早く豪快であることに価値が置かれていることがわかる、など、面白い見解がいっぱい。(

吉住侑子『旅にしあれば』(作品社)
 千葉の生地に三十年ぶりに戻った女性の日々を描く。パス。(

ハロルド・ジェイ『エロス アンチ・エロス』(今村楯夫訳・水声社)
 バーセルミのような小説。エイズ時代の愛とセックスを風刺的に描く。(

29日
『リトアニア わが運命』(村田郁夫訳・未知谷)
 リトアニア大統領の自叙伝。(

金子民雄『宮沢賢治と西域幻想』(白水社)
 賢治が西域童話を書くに当たって参照したであろう書物を、表現や内容の検討から推察する。たいへんにおもしろい。仏教の知識が不足しているところでは、強引さが見えてしまうのが残念。


8月の雑感 夏休みだったのに、驚くほど本を読んでいない感じ。しかし8月はここに挙げた本以外の、神秘主義関連の書物をいろいろと読んだのだった。