《明石町便り1　　2001/9/4》

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★暑かつた夏もゴーヤ（苦瓜）・卜一ガン（冬瓜）・ナスビ（茄子）・トマト（蕃茄）・オクラ（陸蓮根）などを食して何とか凌ぎましたが、やはり聊か疲れ気味でありまして、さあ仕事といふ段になりますと、頭が茫と霞んでまゐります。気分転換（或る人に言はせると逃避）に露台に出て植物の世話を致します。９月初旬の只今は、蓮華升麻・縷紅草（るこうさう）・玉簾・河原撫子・射干（ひあふぎ）・白絹姫などが咲いてをります。薄の根に寄生する南蛮煙管も雁首を擡げてをります。小林シモンさんのマネージャーのＳさんが青山霊園の土手で採集して分けて下さつた蔓穂（ツルボ）も淡紅色の穂状花を咲かせてをります。今年の東京は７月が酷暑で、８月は比較的過し易かつたのですが、そのせゐか、リコリス（彼岸花）の仲間が例年より半月も早く花梗を伸ばし始めました。私は彼岸花科のリコリス属と里芋科の天南星属が好きなので、この両属は殊のほか大切に扱つてをります。因みにいづれも有毒植物です。リコリスは赤・白の曼珠沙華のほか、スプレンゲリ・インカルナータ・オーレア（鍾馗蘭）なども培ててをります。山尾悠子さんが栽培してみたいと仰つたので、休眠期の７月に掘り上げて送附申し上げましたが、岡山でも花梗が出てゐるでせうか？

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☆山尾さんはミュージシャンのスティング（『砂の惑星』の悪役はとても素敵でしたが、『グロテスク』では少々お年を召されて――見なければよかつた……）が御贔屓の由、リコリスのお返しにスティングのミュージック・ビデオを頂戴したのですが、身辺に余裕が無くて、未だに見てゐないのです。大体、ビデオなどは就寝前に見る事にしてゐるのですが、寝室が東向きで夏は午前５時頃から陽光が差し込み、暑くて寝てゐられず、必然的に早寝早起となり、夜は11時前に瞼が重くなつてしまふのです。昼間、見ようかとも思ふのですが、千里眼の国書刊行会の礒崎偏執長が監視してゐるのではないかと思ふと、ゆるりと映像を楽しむやうな気分にはなれないのであります。国書のお仕事が大福に遅延気味なものですから、抗弁など思ひもよりません。

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★ＢＳを受信してゐる友人が面白さうな映画を沢山録画してくれるのですが、これもテープが溜まる一方で、中々見られません。でも香港映画の『美少年の恋』は見てしまひました。ちよつと切ない物語でしたので、失はれた己の若さに思ひ及んで暫し瞑目、ついでにまた『アナザー・カントリー』を見ちやつたりして……。この作品を全く評価なさらない映画通で知られるＫさん（新宿２丁目某店のマスター）から「そんなにお好きなら、ま、どうぞアナザー・カントリーにいらしッたらいいワヨ、でもアンタなんかゼッタイ相手にされないわヨ」と言はれたのは随分昔の事なのですが、痛烈なお言葉が未だに忘れられません。ルパート・エヴェレットも、最近の『理想の結婚』（Ｏ・ワイルド原作）を見ましたら、とても役者ぶりが上がつてゐて、結構な事だと思ひますワ。

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☆一向に冴えない近況綴方で恐れ入ります。最後にお顧ひを一つ……。

仕事は捗らない、電化製品は次々と故障、何で私だけが不幸なの！（陰の声「お家賃の廉い所へさつさと引越したらどう？」）ファックスやパソコンが中々備へられなくて、偏執者の皆様に御迷惑をかけてをります。誰方か御不要のパソコン、または富士通の親指シフトのワープロ（ワープロは近々この世から消えるんですッてね）をお持ちの方がいらつしやいましたら、お譲り下さると助かります。
それでは、また。

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