明石町便り

須永朝彦情報

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須永朝彦バックナンバー

1・日影丈吉
◆給仕少年の推奨献立
◆色のない絵具
◆さまよへる悪霊、或は屈託多き女
◆日影さんのこと

2・井上保&森茉莉
◆殉情は流るゝ清水のごとく
◆Anders als die Anderen
◆『マドモアゼル ルウルウ』奇談

3・泉鏡花
◆魔界の哀愁

4・堀口大學
◆堀口先生のこと

5・足穂&乱歩
◆天狗、少年ほか

6・郡司正勝
◆郡司先生の憂鬱ほか

7・菊地秀行&小泉喜美子
◆美貌の都・月影に咲く蘭の花

8・高柳重信&中村苑子
◆るんば・たんば・『水妖詞館』の頃

9・バレエ
◆アンドロギュヌスの魅惑

10・ディートリッヒ
◆蛾眉

11・内田百間
◆片づかない氣持がする

12・和歌・短歌
◆戀の歌とジェンダー

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《明石町便り9  2003/3/15》


★呀といふ間に4箇月
 御無沙汰を致しました。11月11日以来ですから、4箇月も経つ勘定ですが、いろいろありまして、呀(アッ)といふ間でありました。
 《江戸の伝奇小説5》は『報仇奇談自来也説話』がわりと早く仕上がつたものの、種彦の『近世怪談霜夜星』に手こずらされました。この読本は鶴屋南北の『東海道四谷怪談』と同じ粉本(種本)に拠つてゐるのですが、徳川政権下の事件などはそのまゝ書く事は許されなかつたので、時代を一応中世後期に逆上らせています。しかし、挿絵〔葛飾北斎の傑作〕ともども風俗などは現代を写してゐるのです。私が手こずつたのは、その風俗で、特に遊廓が描かれる条です。原本の3頁分ほど、新吉原の風俗が描かれる条に集中的に補註を施す必要にかられたのですが、何分興味の無い事には首を突つ込まない性分でありますから、吉原など遊里の情報には至つて疎く、註釈をつけるのに四苦八苦したといふ次第であります。註釈の件では、今井佐和子さんと大野佐恵さんに今回も助けて頂きました。例によつて礒崎変酋長に叱咤されつゝ何とか先月末に脱稿、校正は特急で乗り切り〔礒崎さんには連日のやうに、夜討ち・朝駆け、いえ、お帰りがけ・御出勤前にお立ち寄り頂き、本当に御迷惑をおかけしました〕、今月下旬に刊行の運びとなりました。その他、お仕事に関する言訳は《番外篇》に記しましたので、こゝには繰り返しません。
 12月には、歌舞伎座で三島由紀夫の『椿説弓張月』を見たので、その感想を書かうと思つてゐたのですが、もはや〈旧聞もの〉ゆゑ、取り止めと致します。

★大切なる方々を送る
 1月には、親しくして頂いた方が相次いで逝去なさいました。14日に亡くなられた写真家の横須賀功光(のりあき)さんは〈ですぺら〉の常連で、僅か1年間ほどですが、親しくお話を伺ふ事が出来ました。この欄に時々載せてゐる植物のフォト〔バカチョンで撮影したものなんですよ〕を大野姉さんにお願ひしてポストカードに仕立てて頂いてゐるのですが、その1枚〔確か、海の百合〕を薫子さんに差し上げたところ、それをたまたま横須賀さんが御覧になつて大変褒めて下さり、プロ仕様のフィルムを沢山頂戴したのが、12月の事でした。山口小夜子やキムタクの写真集で有名な方ですが、それ以外に良いお仕事を沢山なさつてをられます。〈ですぺら〉に行けば、何点か作品を見る事が出来ます。
 22日には仏蘭西文学者にして詩人の窪田般弥さんが逝かれました。窪田さんには20代の頃に大変お世話になりました。都会人特有のサーヴィス精神に溢れた明るい方でした。岡田夏彦さんや渡邊一考さんと御一緒して荻窪のお宅に度々伺ひ、楽しく過した事など思ひ出します。若かりし頃の中井英夫氏や加藤郁乎氏の風貌などを語つて下さり、またSP盤を持ち出して古いシャンソンも聞かせて下さいました。思潮社の現代詩文庫に窪田さんの集が入る時には、御指名を受けて私が解題の如きものを書きました。最後にお目にかゝつたのは〈郡司正勝先生を偲ぶ会〉の前日でした。会場となる大隈会館で設営に付き合つてゐたところ、窪田さんが現れたので、如何(どう)なすつたのかと思つたら、日時を1日間違へてお出でになつたのでした。
 23日に逝かれた多田智満子さんについては、『幻想文学』の最新号に、至らぬながらも追悼文を書きましたので御覧下さいますやう。御葬儀には行けなかつたので、宝塚在住の友人田中晴史さんに供花の事などお願ひしましたが、香典その他一切受け取られぬといふ事で、逆に遺句集『風のかたみ』を頂戴しました。拝読してみたら、
螢のせて冥き秤は傾かず
 といふ句に目が留まり、初めて拝見するやうな気が致しません。頓(とみ)に怪しくなりつゝある記憶を振り絞つて、その昔(1974年)、多田さんの御希望を承け、神戸在住の詩人鈴木漠さんを連衆に引き込んで巻いた歌仙『蠱業(まじわざ)の巻』の中の一句であることに思ひ到りました。佳い句なので記憶に残つてゐたものとみえます。多田さんはお気軽に希臘(ギリシア)や埃及(エジプト)その他あちこちへ旅行なさいましたが、その折々に小さなお土産を頂戴しました。或る時、中身よりも箱〔有り合せの空箱に詰められたのだらうと思ひます〕が素敵だつたので、その事を申し上げたら、「箱を褒められるとは意外だつたわ」と仰り、次には螺鈿風の装飾を施した中近東のものらしい立派な小箱を頂いてしまひました。実は私は自称〈箱男〉でありますが、ブリキの箱・紙の貼箱の類で美しきものに目が無いのであつて、決して高価な宝石箱とか文筥のやうなものを集めてゐる訣ではないのです。またまた、
  くさぐさの紙片を筥に分け納め早や箱男われは安心
 といふ腰折を披露して、「空箱の類でよろしいのですよ」と申し上げましたら、それは御了解下さつたのですが、「あなた、これは狂歌でせう。面白いけれども、やはり朝彦一流の短歌を作らなければいけませんよ」と窘められた事なども思ひ出します。私にとつて、多田さんの御逝去は近年最大の痛恨事ではありますが、追悼文にも記した通り、昨年の秋にお電話を下さり、「文筆に勤しむ者のあるべき最期」とも申すべき事の範を垂れて下さつたのですから、これを肝に銘じてまゐりたいと存じてをります。
 お正月には、石黒紀夫さん〔小説全集・美少年日本史・鏡花コレクションなど私の本の装丁を沢山して下さつてゐる方です〕の愛猫ラグも急逝しました。猫との別れは私も2度ほど経験してをりますが、これは端から如何やうに慰めて貰つても詮なきもの。紀夫さんもすつかり気落ちなすつて、溜息ばかりついていらつしやいました。2月になつてお訪ねしたら、少しはよくおなりでしたが、まあ半年ほどはお辛いでせうね。数年前に愛猫を亡くされた稲田雅子さんなど、1年以上もキャットシック状態でした。

★今年もまた誕生会
 2月5日、渡邊一考さんとの合同誕生会を開きました。この年になつて誕生会といふのも気恥しいのですが、逆に居直つて、皆さんとお会ひする好き機会と捉へて臨みました。平日にも関はらず、大勢の方に御出席いたゞき、感謝致してをります。松山俊太郎さんと四谷シモンさんの豪華顔合せフォトを御覧に入れます。この写真を見ると、お二人を初めてお見かけしたころ、例へば1971年に新宿の花園神社の社務所で催された加藤郁乎さんの出版記念会などを思ひ出します。澁澤龍彦さん、吉岡実さん、中井英夫さんなど今は亡き方々をはじめ出席者は百人を越えてゐたやうな気がします。『血と薔薇』は既に廃刊、三島由紀夫自刃の翌年ですね。当時のシモンさんは、よく切れる刃物みたいな感じがして、ちよつと近寄り難かつたのですが、今やすつかりお優しくなり、イエズスの如き風貌。一方の松山さんは相変らずお元気で、5日の夜も小沢章友さんを相手に「いつでも掛かつて来い!」と怪気焔をお吐きになつていらつしやいました。寒い中、お出かけ下さつた相澤啓三さん、白鳥友彦さん、小川功さん、東雅夫さん、増田秀光さん……、それから講座の受講者の皆さん、ありがたうございました。

松山さんとシモンさん
松山さんとシモンさん

★歌集『黒耀宮』と、その作者
 黒瀬珂瀾さんから処女歌集〔男性の場合は童貞歌集と言ひたいですね〕を頂戴しました。私が〈歌を忘れたカナリア〉と化してから早や30年、それでも未だに見知らぬ方から歌集を頂戴しますが、山中智恵子さんの集などは別として、大抵は3~4頁、目を通しただけで閉ぢてしまひます。私が現代短歌といふものの大勢(たいせい)に絶望して久しいものがあります。俵万智の片言歌などが評判になつた時も見向きもしませんでした。いつの世にも詩歌の黄金は極く少量なのだと自らに言ひ聞かせ、我が眼が撰び取つた黄金の現代短歌〔葛原妙子・前川佐美雄など十数名の作品〕のみを繰返し読んで来たのです。その余の名を成してゐる誰彼の歌には、ついぞ感心した覚えがありません。
 実は、黒瀬さんには歌集を拝見する前にお目にかゝりました。「気心の知れた連中で遅い新年会をやるから、ちよつと顔を出してくれ」と一考さんに言はれてゐたので、1月26日の午後〈ですぺら〉に出かけたところ、顔馴染の面々の中に見知らぬ青年が一人混ぢつてをり、私がカウンターで薫子さんと話してゐると、一考さんが彼を紹介してくれました。長身痩躯、長髪、黒のスーツの下は色鮮やかな柄物の襯衣(シャツ)、中高の端麗なる風貌であります。春日井建さんの結社に属する歌人で関西在住、このたび24歳にして歌集を上梓したとのこと。前夜〈ですぺら〉を訪れて今日の会合ある事を知り、参加したといふ事でした。私の席は彼の隣に設えられてあり〔一考氏の策謀ならん〕、初対面にして長時間に亙り話を交はす羽目に陥つたのですが、舌滑らかにして、私の著作の殆どを購読してゐるなどと語りながら、気働きを見せてお酒をすゝめてくれたものですから、私もついイイ気になつて盃を重ねてしまひました。誰だつて――と申しては語弊がありますが、素敵な青年にお酌されたら悪い気はしませんからね。案の定、彼が去つた後、私は急性アルコール中毒に近い症状に襲はれ、酷い目に遇つてしまひました。苦しみのさなか、「あの青年は『聊斎志異』に出てくるやうな狐の妖怪ではあるまいか」などと、あらぬ妄想に及んだほどであります。まあ、自業自得ですね。
 それから暫く経って、歌集が送られてきました。実のところ、さほど期待してゐた訣ではなかつたのですが、頁を繰つてゆくうちに、「恰好いゝ歌だ」と思ひ、一気に読み通してしまひました。年下の人の詩歌に感心するのは、藤原月彦さんの句集『王権神授説』以来の事であります。現代に於て歌を詠むといふ為事は、死語を操る事にほかならず、短歌は即ち柩の定型だと、私は認識してゐます。挨拶の贈答に詠むのなら未だしも、日常の感懐の如きをいぢましく31文字に託すなどといふ大方の歌人の営為は、私には唯々おぞましい光景と映ります。敢へて文語と切り結ぶのですから、歌は伊達にして瑰麗であるべきで、形振(なりふり)構ふもの、即ち恰好よくなければ駄目なのであります。さて、黒瀬さんの歌ですが、まづこんなものが目に留まりました。
  

○エドガーとアランのごとき駆け落ちのまねごとに我が八月終る

○ジャン・ポール・ゴルチェのやうな夕焼けに溶けゆく奴をひそかに嘉す

○秋扇投げてひとりのバレエ・リュス せつなき胸を曝す牧神

○女装趣味(トランスヴェスタイト)の友と駆けおりし三年坂に風塵は満つ

○天与といふおそろしきもの纏はせて少年座せり真冬の居間に

○聖堂に崩れしイコン 悪党は美男なるもの熟睡(うまい)なすもの

 悪しき修辞至上主義者の私から見れば、レトリックの端々に些少の不満を覚えぬでもありませんが、それを差し引いても、己が異形を恃む言挙げは恰好いゝものと映ります。
  
○釦散つて打ち重なりぬ少年の独占欲ほど紅き唇
 これは蕪村の名吟「牡丹散つて打ち重なりぬ二三片」の絶妙なる本句取り、この歌の後には「鷺紊(みだ)れ共に寝乱れ血ぬられし月と紅葉は男のかざり」といふのが続き、パロディの才能にも端倪(たんげい)すべからざるものが看取されます。
  

○あな三島愛死(エイズ)を知らず死にたりと嬉しきことをゆめ言ふなゆめ

○月無くて白河夜船 黒猫が人身(ひとみ)で恋を告げに来るとか

○ラバーシャツの青年が背に食ふ夕陽あまりにまぶしくてわが地獄(ゲヘナ)

○少年の脱衣刻々鏡らは愛撫のごとき視線を返す

○千の朝一つの夜に勝らねば奴隷のごとく愛しあふのみ

○たそがれし悲歌を継ぎたる若者よおまへはウラル・アルタイ語族

 この人は官能の表現にも長けてゐるやうで、またアナーキーなる資質、志の意気軒昂も具えてゐるやうに見受けられます。殊に「たそがれし悲歌を継ぎたる若者よ……」の一首は、短歌を撰んで今から出立するのだといふ宣言(しかも下句には負の認識あり)の如くに映り、頼もしささへ覚えます。これから峻路を往く訣ですが、幸多かれと祈りませう。
 『黒耀宮』は、ながらみ書房刊、定価2500円(税別)。

★吸血鬼愛好家の同人誌
 吸血鬼専門の同人誌が幾つもあるのかどうか、私は一つしか知りません。それは、朝日カルチャーセンターを受講して下さつてゐるヴァンパイア・フリークの仲良し3人組の皆さん〔内田夕紀子さん、竹内理奈さん、大串京子さん〕が出してをられる、その名も『吸血鬼の本――The Book of Vampires』で、毎年一冊刊行といふ、今時には珍しい悠然たる刊行ペースです。去年、10年目にして無事第10号を刊行、〈吸血鬼映画〉を特集してゐますが、「吸血鬼映画リスト(1896年~2002年 700タイトル)」は実に壮観、一見の価値ありと考へますので、こゝに紹介する次第であります。他に同人のエッセーや小説を掲載、あの「しおせ順」さんもイラストレーションを描いてますよ。関心をお持ちの方は発行所のポワント・デュ・ラックへ直接お問ひ合せ下さい。
 〒167-0022 杉並区下井草1―2―10 メイゾン阿佐ヶ谷北201号 大串方

★パソコン&ワープロ
 この駄文をお読み下さつた中島晶也さん(『幻想文学』の寄稿者)から昨年末にノート・パソコンを頂戴致しました。一考さんの紹介で知り合つたパソコン通の飯田克比呂さん(偶然にも中島さんとは旧知の間柄の由)が、私の使用勝手のいゝやうに種々の設定をして下さり、当面、インターネットとメールだけは出来ることになりました。比呂さんが半日あまり御教授下さいましたが、何分、ワープロの親指シフトに馴れてしまつたものですから、キーボードの操作がおぼつかなくて、暫くは苦しめられさうです。インターネットは少し覗いてみましたが、キリが無いやうなので、仕事に関するものにとゞめようと思ひます。これで原稿を打つのは未だ難しいので、当分はワープロに頼る事になります。ところが、現在使用中の富士通の親指シフト・ワープロが風前の燈の如き状態。小川功さんがネット・オークションにて、これはといふ物を探して下さつてゐるのですが、中々入手出来ません。誰方か、御不要品をお持ちの方、譲つて下さいませんか。また、情報をお持ちの方もお知らせ下さい。できれば93年以降のものをお願ひ致します。現在進行中の『江戸の伝奇小説』を完成させるために是非とも必要なので、よろしくお願ひ申し上げます。

★『ゴーメンガースト』その他
 前回「あゝ見たい」と騒ぎ立てた『ゴーメンガースト』のビデオは、あれから直ぐに大野姉さんの御好意を恭うして、無事に見ることが叶ひました。全4時間、飽きることなく見てしまひました。中々の傑作であります。
 評判の映画『ロード・オヴ・ザ・リング』、誘はれて見た第1部は私には聊か退屈だつたので、続篇は見るまいと思つてゐたのですが、現在上映中の『二つの塔』を御覧になつた服部正さんが「素晴しい!」と絶讃なさるではありませんか。服部さんの御意見は大方肯綮に中(あた)る事が多いものですから、初めの意志が揺らぎ始めてゐます。3時間、どうしようかな。
 冬の間は露台植物園も休眠中、御覧に供するやうな植物のフォトがございません。何も載せないといふのも寂しいので、明石町近辺の風景を御覧に入れませう。まづは、私が住む集合住宅のお隣りの聖路加国際病院の鐘楼。昭和戦前の建物で、戦時の空襲にも焼け残りました。病院が別に新設されたので、現在は看護大学として使はれてをり、夜間には鐘楼のみライトアップされます。前庭が広く、一般に開放されてゐます。次に、明石町河岸の聖路加ガーデンのテラスから見た佃島・石川島の高層住宅群、手前は佃大橋です。川はもちろん隅田川です。私が明石町に移つて間もない頃〔4半世紀余以前〕、中井英夫氏から「明石町河岸の安ホテルはまだあるのかい?」と尋ねられました。そんなものはついぞ見かけないので、「何ですか、それ」と答えたら、「フン、知つてるくせに」と仰つて御機嫌斜めの体。どうやら曖昧宿のやうなもの、それも少々毛色の変つたものがあつたらしいのですが、それきり調べもしませんでした。それから、佃大橋から眺めた隅田川河口、中央に架かつてゐるのが勝鬨橋、左手は月島、黒く写つてゐる右手の建物が聖路加タワーです。航行する船舶はこゝに写つてゐる艀(はしけ)の類が殆どで、あとはお台場・竹芝桟橋と川上の浅草吾妻橋の間を往復する遊覧船ですね。あともう1枚、部屋の写真を御覧に入れます。この部屋は応接用なのですが、いつの間にか書庫のやうになつてしまひました。

聖路加病院の鐘楼
聖路加病院の鐘楼

佃島
佃島(リヴァーフロント)

隅田川河口
隅田川河口

応接室?
応接室?

『幻想文学』66号の特集「幻想文学研究のキイワード」、諸氏の論説の中では瀬高道助氏の「幻想文学出版」が抜群に面白い。芋崎氏(南篠竹則さんの『あくび猫』にも登場しますよ)の面影が髣髴として顕つあたり、並の筆力ではありません。
 朝日カルチャーセンターの講座は、引き続き4月から《歌舞伎ワンダーランド》の「作品編」を担当致します。詳細は別掲の案内を御覧下さい。5月からは文京区民大学の講座にも出ることになり、これも歌舞伎です。今年は歌舞伎発祥400年ださうで、朝日新聞から出でゐる〈アエラ・ムック〉でも歌舞伎の特集号を出すとかで、コラムを5つほど書かされました。今月中に出るやうです。
 そろそろ桜の季節ですね。葛原妙子さんが晩年に「この年になりあすとね、桜とか紅葉とか、あゝいふものが無性に見たくなるンであんすのよ」と仰り、或る年の春、千鳥ケ淵までお花見のお供を仰せつかつた事がありますが、私も段々その域に近づいたやうで、なるべく人出の無い所へ出かけて思ふ存分花を眺めたいと思つたりします。東京は何処へ行つても人が多いですからね、今年は大野姉さんにお願ひして秦野あたりを案内して貰はうかと考へてをりますが、これが知れるとまた礒崎偏執長から「そんなことしてる間に原稿の5枚や10枚書けるでしョ」と、お小言を頂戴してしまひさうですね。
 『山田まりおは天才か?』と題してボーイズ物のコミックスについても少し書かうと思つてゐたのですが、かなり長くなつてしまつたので、これはまた更めて。その後もいろいろと読んでゐますが、やはり山田まりおと神葉理世(しんば・りぜ)を越える作者には出会へません。逢坂みや・鹿乃しうこ・捨井タスコ・定広美香もよい。そうそう、誰方か、村野犬彦の『ガクラン天国』1・2(竹書房)、アンソロジー『TRANS』(光彩書房)のバックナンバー、譲つて下さいませんか。
 それでは、また。次はゴールデンウイーク前に何とか更新したいものです。  3月12日